第百九十七夜   休み時間の終わり際、子供達を教室へ戻るよう促しながら受け持ちの教室へ向かっていると、廊下の突き当りの扉の向こうからこちらを覗く子供の姿が見えた。 突き当りにはアルミニウムの枠に上半分がガラス張 […]
第百九十六夜   娘達二人の七五三の写真が仕上がったと言う連絡とともに、近所の写真館から光学ディスクが送られてきた。きれいに製本した小さなアルバムを作るサービスを利用したのだが、実際に仕上がるまでのツナギにデジ […]
第百九十三夜   連休前、比較的早い時間に仕事が片付いて安アパートへ帰宅できた。 肩に掛けた鞄の中の鍵を手で探りながら、蛍光灯の照らす共用廊下へ入ると、私の部屋の前に中年の男女が立っていて、ヒールの音にこちらを […]
第百八十六夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百八十四夜   夕方から夜通し車を走らせて、東北のある山中の川岸へ付いたのは丑三つ時の闇の中だった。 高速道路は混む様子もなく、禁漁期間前最後の休日と意気込んで張り切りすぎたか。朝間詰めまでは暫くある。夜道の […]
第百七十八夜   アルバイト先のカラオケ店へ着くなり、バックヤードで店長から、 「例の部屋、大掃除するから着替えたら来い」 と言われて気が重くなる。 今年の春先から異臭のする部屋があり、利用客から人死が出ている […]
第百七十四夜   夏の終わりにシーズンをやや外れて安くなった学生向けのプランを利用した旅行を友人から提案され、なんとか金と時間の都合を付けて参加することになった。 しかし、ターミナル駅の高速バス乗り場へ早朝に付 […]
第百七十二夜   「この後、幽霊を見に行かないか」と誘われて、思わず、 「は?」 と間抜けな声を上げてしまった。 頭から外した手拭いで顎の下の汗を拭いながら誘ってきたのはこの剣道クラブで知り合った中年男だ。クラ […]
第百六十夜   朝食の片付けをしていると電話が鳴った。急ぎ手を拭いて番号表示を見れば娘の緊急連絡網の上流で、受話器を取る。朝の挨拶を交わした後に相手の告げた用件は、 「数日前の不審者情報で流れた犯人が逮捕された […]
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