第二百二十七夜   フクロウの石像を背に立って文庫本を開きゼミの友人を待っていると、 ――チリリ、チリリ 周囲の喧騒の中で妙に目立つ鈴の音に気付いた。声量は大きくないのによく通る声というものがあるのと同じような […]
第二百二十五夜   暇に任せてカウンタの裏に出した椅子に座って雑誌を読んでいると、店の外からLEDの強い光が目を刺した。駐車場に目を遣ると、見慣れぬ銀色の乗用車が入ってくるのが見える。 椅子と雑誌を事務所へ片付 […]
第二百二十四夜   雨が降って少なかった客も帰ってこれ以上の客も来なかろうと、少々早いが店仕舞いを始めた。 夜食用に水を張った小鍋を火に掛け、レジスタを開けて有線放送を聞きながら札を数えて纏める。 紙幣を片付け […]
第二百十八夜   恐怖の余り、クローゼットの前に立ち尽くしていた。 不思議なことに、あるいは極めて不公平なことに、こうした不思議な現象、それによって惹き起こされる恐怖に出会い易い体質と、そうでない体質とがあるら […]
第二百十七夜   病院のロビィに飾られた観葉植物の脇に立ち、スマート・フォンを弄っている。 別にどこが悪いのでもない。寧ろ今のところは全くの健康体であって、診察に訪れている人達からウイルスなりを貰わぬうちに退散 […]
第二百十六夜/h3>   排気ガスを浴びながら、深夜の街道沿いを歩いている。部下に相談があると請われて閉店間際まで酒と愚痴とに付き合わされた帰り道だ。部下は晩くまである公営鉄道の最終電車に間に合ったが、こ […]
第二百十三夜   買い物を終え、昼食に何を作ろうかと考えながら海岸線の道を走っていると、前方の磯にちらちらと動くものがある。 少し近付いて、どうやら青い上着を着た子供のようだとわかるが、他に誰の姿もない。 この […]
第二百三夜   祖父に呼ばれて隣県の父の実家に帰った。じきに年末年始の休みだから短いなりに戻れると言っても、急用だからといって聞かない。子供の頃から可愛がられ、父が死んでからはいっそう気を回してくれるものだから […]
第百九十八夜   解体業者の友人に頼まれ、県外の古い平屋へバンを駆ってやって来た。 間の悪いことに若い作業員が骨を折ったり、親戚に不幸があったりで都合が付かず、手伝いを頼まれたのだ。 その代わり、所有者の残して […]
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