第三百十一夜   リビングのソファで上の娘が塾の宿題を解くのを後ろから眺めていると、廊下の戸が開いて柚子の香りが漂ってきた。 続いて寝間着姿の下の娘がロボットのように手脚をぴんと伸ばして登場し、妻がその髪をタオ […]
第三百十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、最近、生物室で授業あった?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客も少な […]
第三百九夜   朝から電車に乗って適当な駅で降り、ぶらぶらと知らない街を歩いて写真を撮って回るのを趣味にしている。 今日も秋晴れの空の下、赤く実った万両の実やら、それをついばみに来る野鳥やらをフレームに収めなが […]
第三百八夜   アルバイトを頼んでいる子達のシフトの都合が上手く付かず、深夜から朝までの店番の後、六時間だけ休憩を挟んで昼からもう一度店に入らなければならなくなった。自宅はすぐ近いとはいえ、時間が短いので帰宅し […]
第三百七夜   部活の朝練習を終えてジャージ姿で教室へ駆け込んだのは、ホームルームの始まって二分ほど経過したところだった。顧問が時間にだらしなく、後片付けを担当する一年生が始業時刻に間に合わないのはいつものこと […]
第三百夜   金曜の夜に夜行バスで東京へ来て、一日あちらこちらの庭園の写真を撮って回ると、冬至も近付いて黒々と澄んだ晩秋の空は月の見事な夜になっていた。 明日の夕方には再び高速バスに乗る予定だが、それまでの時間 […]
第二百九十九夜   こんなに小中学時代の同学年の皆が集まったのは何年ぶりだろう。互いにちらちらと顔を見合い、当然目が合うのだがその度に、 「今は忙しいからまた落ち着いたらね」 というようなアイ・コンタクトをして […]
第二百九十八夜   文化部の同級生数人で、中間試験を終えた開放感を味わいながら駅前の大通りまで歩いていた。テスト前二週間の部活動停止期間がようやく開けて、その間に積もった他愛もない話をするために歩調を緩めて歩い […]
第二百九十七夜   文化部の同級生数人で、中間試験を終えた開放感を味わいながら駅前の大通りまで歩いていた。テスト前二週間の部活動停止期間がようやく開けて、その間に積もった他愛もない話をするために歩調を緩めて歩い […]
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