第七百三十八夜

 
 冬至を少し過ぎて帰省した際、最寄り駅のロータリで幼馴染の家の父親にばったり出会った。大学に入るまでは私の一家、彼の一家ともうひと家族とで、一緒にキャンプや釣りに出掛けたり、互いの家にお泊りしたりと家族ぐるみの付き合いがあった。弟達は今でも一緒に出掛けているはずだ。

 彼は母親が買い出しをしている間に駅前での用事を済ませに来ていたところで、特に約束がないのなら車で実家まで送ってくれると言う。お言葉に甘えて車に乗り、母親を少し離れた量販店で拾う。彼女は大袈裟に喜んで、せっかくだから一晩泊まって行けと言い、スマート・フォンを取り出して母に連絡を取り、話をかってに進めてしまった。

 仕方なく、といっても嫌というわけではなく幼馴染の家へ着くと彼はまだ帰省してきていないとのことで、久し振りに会った彼の弟と妹と一緒に遊び、夕食をご馳走になって寝る。布団の中でも大学の様子やら何やらと質問をされながらいつの間にか眠り、目が覚めて朝食を頂くと車で送ろうかと言われるが、大した距離でもないからと断って家を出る。

 少し歩いて実家に着くと、母親が出てきて、
「予定を変えるなら連絡くらいしろ」
と叱られた。何のことだか分からずに、幼馴染の母親から連絡が行っていただろうと返すと彼女は血相を変え、そんな連絡は来ていないし、あの家にはもうあの家族は住んでいないはずだと言う。

 まさか何かの不幸でもあったのかと尋ねるとそうではなく、相続の関係でご主人が本家に移住しなければならず、元の家は人に貸して引っ越しをしたのだという。

 部屋に荷物を置きに行きながらそんな話をして居間に入ると、そこでお茶を啜っていた祖母が、
「あの家もずいぶん古いからね。あんたが懐かしくて呼んだんだろうね」
と呟くように言った。

 そんな夢を見た。

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