第六十一夜

浜で友人たちと花火を見た帰り、路面電車で家路に就き、最寄りの駅で彼らと別れて一人山道を歩く。

花火の余韻の名残惜しく、木々を抜ける夜風に吹かれながらゆっくりと歩いていると不意に、

どん、どどん

と大きな音が腹に重く響く。

催しは終わったはずだが花火の余りでも打ち上げたものかと訝しみながら、崖の前に広がる夜空を振り返る。が、黒々とした空には銀の星々が疎らに瞬くばかりである。

ぽん、ぽこぽん

ぽこん、ぽぽん

道の脇の茂みから軽く小さな音がして、思わず立ち止まると、低い、しかし穏やかな声がする。
「違う違う。音は張力の平方根に比例して高くなるんだから、もっと腹の力を抜いて、こうだ」。

一拍置いて、

どん、どどん、どん

と打ち上げ花火の音がする。もう一拍して、

ぽん、ぽぽん、ぽん

再びでんでん太鼓のような音が続く。低く唸る声と溜め息が続いた後、
「父ちゃん、ぼくらは父ちゃんみたいにメタボなお腹をしていないから、これ以上力を抜いたらお腹が痛くなっちゃうよ」
と幼い声。
「うーん、いい機会だと思ったが、お前達にはまだ早かったか。今日は花火を見るのに夜更かししたな。そろそろお家に帰ろうか」。
「うん、ぼく、もう眠いや」。
「うんうん、ぼくもだ」。

さらさらと笹の葉の揺れる音が段々と遠ざかって、私も家路を急ぐことにした。

そんな夢を見た。