第四百五十三夜

 

高校から出された大型連休中の課題プリントを、テスト前に復習するために複写しておこうと思い立って近所のコンビニエンス・ストアへ向かう。

近所といってもマンションの玄関口を出て小道を一本挟んだ隣のアパートの一階で、直ぐに店に着く。幸い、雑誌棚の隣のコピー機に利用者の姿はない。

上部のカバーを持ち上げると、端に小さなカードが置き去りになっている。手にとってみると、誰かの運転免許証だった。プリントのコピーをさせている間、手持ち無沙汰で何となくそれを観察してみる。氏名、生年月日が最上段、その下の右側に顔写真。その左に記載された住所には見覚えがある。自分の住んでいるマンションと番地、号まで一致している。部屋番号がないから、ごく近くの一軒家の住人かと思われる。住宅街のコンビニだから、利用者も近所の人が多いのだろう。

これなら店なり警察なりに届けるまでもなく本人の家に直接持って行くこともできそうかと思い、スマート・フォンで地図を表示させてその住所を確認する。が、記載された号の区画はマンションに専有されていて、一軒家などない。

それがわかると脳裏に「偽造」の二文字が浮かび、もうそれ以上その免許証に係りたくなくなってレジ・カウンタの店員のところへ忘れ物として届け、取り終わったコピーをそそくさとクリア・ファイルに挟んで店を出た。

そんな夢を見た。

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