第四百四十六夜

 

数カ月ぶりに緊急事態が解除され、久し振りにお茶のお稽古の案内が届いて、教室へお邪魔した。

お茶室に入ってまず驚いたのが、低い機械音を鳴らす空気清浄機で、
「換気をと言われても、お茶室では難しいでしょう?せめて風情をと思ったのですが、どうも手先が不器用なもので」
と、通気口と操作ボタンとを除いて桜の木の肌で覆われ、上部にはお花を活けられたそれを見て苦笑する。が、私を含め生徒は皆その出来を褒める。何より、これこそおもてなしの心と云うべき配慮に感じ入ってのことだ。
「さて、マスクやお茶碗の扱いですが、これからお願いするのは、それが伝統的に正しいという訳ではありません。飽くまで私がお医者さんと相談して、これなら宜しかろうと……」
と断ってから、色々の所作をして見せ、その心を説明し始める。

暫くして、生徒の一人、若い女性が小さく悲鳴を上げた。先生が水を向けると、床の間の前に袴を穿いた膝から下の脚だけが、うっすら透けて見えるという。先生は、
「お休みの間に一度、神主さんにお祓いをお願いしたのですが、私はそういうものに鈍いもので駄目ですね」
と苦笑して、
「まあ、お茶に興味のある方ならば、悪さはなさらないでしょう」
と言ってお茶碗を一つ取り出し、お茶を点てて床の間の前に差し出し、
「脚だけであれば、病気を撒くこともないでしょうし。あ、でもお茶を召し上がることは出来ないかもしれませんね」
と笑うのだった。

そんな夢を見た。