第四百三十九夜
数日ぶりに気持ちよく晴れた日曜の朝、春の長雨のために溜まってしまった洗濯物を午前中にやっつけてしまおうと、ベランダの物干しに洗濯物を吊るしていると、背後からインターフォンの呼び出し音が聞こえた。
特に友人の訪ねてくる予定もなければ通信販売の配達等の予定もなく、訝りながら室内に戻って玄関外の様子を映すカメラの映像を確認すると、見知った宅配業者の男性が小さな荷物を手にこちらの応答を待っている。
実家からでも何か送ってきたかと思ったところで、一つ心当たりを思い出し、ポケットからスマート・フォンを取り出して日付を確認して、確信する。
インターフォンの通話ボタンを押して返事をしてから玄関を開けると、
「このご時世ですと、なかなか直接会うことも憚られますよね」
と言いながら伝票と、花柄の包装紙に包まれた箱を男性が差し出す。お付き合いをしている男性からのプレゼントとでも思われているのだろう。
作り笑いをし、曖昧に返事をしながら印を押して荷物を受け取り、
「いつもありがとうございます」
と礼を述べて扉を閉める。
差出人は予想通り、見たことのある名前だった。ただし、私はその名前の人物を知らない。ただ、学生の時分に一人暮らしを始めて以来毎年欠かすこと無くホワイト・ディになると、小さな縫いぐるみや可愛らしい小物にメッセージ・カードが添えられて送られてくるのだ。書き出しは決まって、
――今年もバレンタイン、有難う
なのだが、当時から毎年欠かさずにチョコを送っている相手など、私には居ないのだった。
そんな夢を見た。
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