第四百七夜

 

少しだけ長く寝た休日の朝、寝ぼけた頭で珈琲を淹れながらスマート・フォンをチェックすると、ある米国人の友人から久し振りにメッセージが入っているのに気が付いた。

大学時代にこちらへ留学でやってきて、立派な日本オタクに育って帰国した人物で、先頃も日本で流行りの漫画と、お気に入りのスナック菓子を送ってくれと言うのでそれに応じたばかりだった。

これまでの経験上、船便で送られるのに一、二週間掛かるようなので、荷物の届いた礼だろう。時差が十時間もあるので、向こうはそろそろ深夜になる頃だ。返事は朝食を片付けてからで十分だろう。

そう思いながら端末を寝間着代わりのスウェットのポケットへ仕舞い、冷蔵庫から取り出した卵を小さなフライパンに割って火に掛けると、端末が途端に小刻みに震えて通話アプリの受信を知らせる。

端末を取り出すと、案の定それは件の友人で、少しずつ白く固まってゆく白身を見ながら通話を開始すると、
「済まないね、まだ寝ていたかい?」
と、かなり興奮気味の日本語で言うその調子に驚く。彼のメッセージを碌に確認していなかったから気付かなかったが、どうやら急ぎの用だったらしい。
「ああ、今起きたばかりでメッセージも読んでいないんだ。荷物に不具合でもあったかい?」
と尋ねると、
「早速、ゾンビ物の漫画を読んで、寝る前にお礼を言おうと思ったんだけどね」
とやはり興奮したまま、
「とんでもないことが起きたんだよ」
と勿体つける。どうしたんだと促すと、
「僕の死んだひいお祖母ちゃんが、選挙で投票に行ってたんだ。いつの間にかゾンビになっていたらしい」
と言ってから、大きな声で笑った。

そんな夢を見た。