第三百五十九夜

 

約束の時間までにどうにか部屋を片付け終えてお茶の用意を済ませると、自分用のマグに淹れた焙じ茶を一服しながらチャイムの鳴るのを待つ。

約束の相手はメーカから紹介された街の電気屋さんである。ケーブルテレビとネット配信に利用しているモニタが今朝起きると突然映らなくなっていた。

機械にはとんと疎いのだが、ネットの回線は生きているので、モニタ側の問題だろうと判断した。
取り敢えず朝食を摂り、メーカのサポート・センタが開くのを待って電話したところ、早ければ午後一番に見てくれると言うので宜しくお願いした後、とても他人を招き入れられる部屋でないことに気付いたのだった。

程なくしてマスク姿の電気屋のお兄さんがやってきて、部屋に上る前に持参の使い捨てスリッパを履いてくれる。

問題のモニタの元へ案内すると症状を尋ねるので、
「電源は入るんですけど、ネットもケーブルテレビも『信号の入力がありません』だったか、そんなメッセージが表示されて……」
と答えると、
「では、配線を見てみます」
とテレビ台の裏を覗き込む。
そのまま間を繋ぐように、
「お気付きになったのは?」
「今朝です」
「昨晩は平気でした?」
「ええ……」
「昨晩、お掃除のためにこの辺りに触りました?」
「いえ、昨日電源を切って直ぐに寝て、置きたら直ぐBGM代わりに電源を入れるんですけど、そうしたらこの状態で」
「お一人暮らしですよね?ああ失礼、設置は誰がなさったのかと思いまして」
と言うので、確かに機械音痴の一人暮らしだから、モニタの購入先の設置サービスを利用したと答える。

彼はなるほどと呟いて小刻みに頷き、胸ポケットから取り出したメモに何やら書き殴り、
「壁の、配線の出ているところって何処かわかりますか?」
とこちらを振り返ってそのメモを突き出す。

確か台の裏だったろうか、一目見ればわかりそうなものをと思いながらメモを見ると、
――ネジが切ってあって、決して勝手に外れる筈のない線が外れています。私が触る前に、警察を呼ぶべきかと思います。

と書いてある。私が顔を上げて彼を見ると、
「ブレーカは玄関の方でしたか」
と言いながら、手で部屋を出るように促した。

そんな夢を見た。