第三百四十四夜

 

テレワークの拘束時間が終わったら買い物に行かねばと思いつつ、あれやこれやと資料を作っているうちに、夜も九時を回ってしまっていた。

近所に二十四時間営業のスーパ・マーケットがあるのだが、数日前の今頃に行ってガラ空きの棚に遭遇したため、食料の備蓄の少なくなった今日は早目に買い物に出るつもりだった。

嘆いても時計の針は戻らないと諦めて、冷蔵庫から発泡酒を取り出し、ツマミになりそうなものがなかったかと食器棚の下部、保存の効く調味料などを仕舞っている扉の前にしゃがみ込む。

鯖と焼鳥の缶詰が幾つか見つかり、味の重複の無いよう三つほど手に取って、グラスと箸とを携えテーブルに戻って腰を下ろす。

いざプルタブを起こす前に、一体いつ頃買ってきたものか記憶がないのが気になって消費期限を探すと、ギリギリで期限内だ。ひょっとすると引っ越しの晩に、手伝いを頼んだ友人達と飲んだときの余り物だろうか。

そんなことを思いながらグラスに発泡酒を注ぎ、焼鳥の缶を開け、手を合わせて小さく頭を下げて箸を付ける。酒飲み用の味付けなのか、タレは甘味が控えめで塩辛く、自分好みである。

タブレット端末に手を伸ばし、配信サービスから古い映画を選んでスタンドに立て、それを肴に酒を呑む。

小さな缶詰はすぐに空になり、次は少々甘めのものをと、蒲焼き味の鯖の缶詰に手を伸ばす。

タブを摘んで引き起こすと、カチリと蓋の開く音がして、タブを引けば小さな抵抗とともに上蓋が外れる。

改めて箸を手にとって缶へ伸ばして初めて、缶の中に鯖の身がないのに気が付いた。念の為にと蓋の裏を見ても、そこに張り付いていようはずもなく、缶の中には茶色い煮汁だけが揺蕩っていた。

そんな夢を見た。