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夢千夜
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Posts in 短編
小説記事
第二十夜
橘 偲
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3月 9
第二十夜 夕暮れ。不意に強くなった西風に追われるように吹かれて背を曲げ、マフラーに鼻まで埋もれながら大学の構内を歩いていると、空一面低い黒雲の垂れ込めて一粒ぽつりと来たかと思えばばらばらばらと俄に勢いを増してくる。 この […]
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小説記事
第十五夜
橘 偲
-
2月 19
第十五夜 車内アナウンスで次のバス停の名前が告げられ、降車ボタンを押すよう促されて右手を持ち上げると、先に誰かがボタンを押したようで 「次、停まります」 の声が車内に響いた。 程なく停車し、大学生くらいの五人組、仲の良さ […]
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小説記事
第十四夜
橘 偲
-
2月 16
第十四夜 駅からの帰路、小さな交差点を左へ曲がり細い道に入る。街灯が少ないのに応じた分だけ、自転車の灯が強まったように思われる。 小路との三叉路を一つ、交差点を一つ過ぎ、右手に駐車場が見えたところで前籠の鞄からキーケース […]
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小説記事
第十二夜
橘 偲
-
2月 9
第十二夜 夕まづめ。ユスリカが羽化をしようと湧いて立つのを食らってやろうと、葦のしがらみの陰から泳ぎ出る。昨夜は上流で雨でも降ったか、水はやや濁って流れも早い。 こんな日は食事に夢中になって流される者が少なくない。すると […]
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小説記事
第十一夜
橘 偲
-
2月 5
第十一夜 夜の山道を下り、冬枯れた水田に挟まれた交差点で信号に引っ掛かると、辻を四隅から照らす街灯の明るさに安堵する。山の中に慣れた目には、昼のように明るいといっても大袈裟ではない。人間というのはつくづく昼行性の動物なの […]
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小説記事
第九夜
橘 偲
-
1月 29
第九夜 つるりと艶のある赤茶色の鬼皮の先端、ほつれるようにささくれ立って尖った先を下にして、イガに付いていた凸凹の台の部分と鬼皮の境目に小刀の刃を差し入れると、下茹での際に染み込んだ湯が滲み出て刃の上に露の玉を作る。クイ […]
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小説記事
第八夜
橘 偲
-
1月 26
第八夜 LEDの強い灯の下、ドラムの回る低い振動音を聞きながら、茶色いビニル張りの長椅子に深く腰を掛けて漫画雑誌の頁を捲る。洗濯機の振動音がこんなに大きく聞こえるのは深夜だからか。大通りの交通量も人通りも、普段この店を利 […]
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小説記事
第七夜
橘 偲
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1月 22
第七夜 柳の木に背を預けて、ぼんやりと水面に糸を垂らしていると、 「どうですかい」 と右手から声を掛けられた。振り返ると小綺麗な格好のお侍さんが笠をちょいと持ち上げて微笑んでいる。左脇に置いていた魚籠には二匹の小さな鮒が […]
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小説記事
第五夜
橘 偲
-
1月 15
第五夜 目の前に、一本の蝋燭が炎を掲げている。五寸ほどの、すらりと腰のくびれた蝋燭に、つい今しがた自分で火を灯したものらしい。 炎の周りだけが円くぼんやりと橙色に眩き、その外は真の闇。そこには胡座をかいた膝に手を置いて背 […]
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