第七十一夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客 […]
第七十二夜   大学の夏休みは長過ぎる。そんな時間を持て余した学生達が集まる大学のサークル室で、時折雑談を交わしながら、あるものは勉強をし、またあるものは代々伝えられてきた漫画を読み、ゲームに興じている。 盆に […]
第六十九夜 事務所で机に向かいカタカタとキィ・ボードを打っていると、「こんにちはー」と語尾の間延びした大声とともに長い茶髪の女性が入ってくる。 仕事上の知り合いで、まだ若いのにこれでもかと派手な服装と化粧をしていることも […]
第六十八夜 運動不足を解消するのに、少々高い自転車を買った。道具を用意したのはいいのだが、元来が運動不足になるような出不精だ。単に運動のため出掛けるのが億劫なのは言わずもがなである。そこで一念発起して、休日には手頃な観光 […]
第六十七夜 「で、相談って何です?」 頼んだ料理が揃って乾杯し、グラスのビールを一口呑んで若い男が問う。卓の向かいには高級なスーツに身を包んだ四十絡みの紳士が土気色の顔をしてグラスをあおっている。グイグイとグラスを空け、 […]
第六十四夜 「不思議なことってのは、あるもんなんだなぁ……」 と、乾杯のビールを一口飲んだSEの友人が切り出した。 一ヶ月ほど前に彼の引っ越しを手伝った際に、相場より随分と家賃の安い物件を見つけたのだと喜々として語ってい […]
第五十九夜 ある山奥の神社へ用があり、朝から汽車を乗り継いで最寄りの駅に付いたときには午後一時を回っていた。バスの来るまでの暇を、待合小屋の日陰で居合わせた地元の老人達と世間話をして過ごす。ようやく着いたバスから家族連れ […]
第五十八夜 路線バスを降りると、空梅雨のお天道さまがじりじりと肌を焼く。帰りのバスの時刻を確かめようとバス停の時刻表の前に身をかがめると、川を渡って来る風が肌の熱を幾らか奪ってくれるのに気が付く。 その風に乗って、某園の […]
第五十六夜 もう夜も半ばというのに相変わらず不快指数の高い空気の絡みつく中を、自転車で友人を先導しながら走る。 私を追いながら、アスファルトとコンクリートが日光を溜め込むのだ、密度の高い住宅やビルがエアコンを点け続けるか […]
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