第百四夜   忘年会の酒の残って重い頭と体とを無理に布団の外へ引きずり出して早起きをした。昨晩、酒席特有の特に意味の無い会話を上の空で聞き流しながら、年末をできるだけぐうたら過ごすための計画を立てており、その第 […]
第百三夜   後ろ手に施錠しながらハイ・ヒールを脱ぎ、灯もつけぬままベッドに突っ伏す。 スーツを脱がねば皺になる。化粧を落とさねば肌が荒れる。コンタクト・レンズを外さねば目が傷む。それら全てがあまりにも億劫で、 […]
第百夜   風呂上がりの濡れた髪にタオルを巻き、居間兼寝室の炬燵の中で浮腫んだ脚を揉んでいると、風呂場からぎゃあと可愛げのない悲鳴が聞こえた。 ゴキブリでも出たのなら自分で片付けられるような度胸のある妹ではない […]
第九十九夜   初めてデジタル・カメラを買ったという友人から、「新品なのに壊れてるようだ」と連絡が来て、渋々引き受けることにした。 喫茶店で待ち合わせると、気安い仲でこういう物に詳しそうかつ暇そうなのが私だった […]
第九十七夜   授業の終わった姉に手を引かれて家に帰ると、普段ならこんなに早く帰宅しているはずのない母が落ち着かぬ様子で箪笥を漁り、旅行鞄へ荷物を詰めていた。 喪服や数珠を鞄に詰めながら姉に説明する母曰く、親戚 […]
第九十四夜   学生街のアパートへ、酒と肴の入ったビニル袋を提げて友人を尋ねた。 キャンパスにほど近い都内の一等地に有りながら破格の家賃で、貧乏学生には有り難いのだそうだ。 大学へも駅へも徒歩二分など羨ましい限 […]
第九十二夜   川へ釣り糸でも垂らそうかと思い立ち、始発から電車を乗り継いで山の中の駅へ降りた。改札を出ると小さな駅舎の前を通る細い舗装路があって、そこを五分も歩けば川岸へ下りるコンクリート製の階段があって、釣 […]
第九十一夜   ごつりと頭を打って気が付くと、黒い床の上へ頭を打ったらしい。辺り一面にぎっしりとひしめく仲間達も皆同じようで、気の付いたものは辺りをぐるぐる見回して首をかしげている。 ここは何処だ。 回りの仲間 […]
第八十八夜   稲刈りを終えても、冬支度に追われる村の秋は忙しい。それでも「雨の日くらいは相手をしろ」と庄屋様に呼ばれ、濡れ縁に腰掛けて碁を打っていた。なにしろ立派な屋敷で軒が深い作りなものだから、少々の秋湿り […]
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