第四百八十五夜   夕立の中に傘を首で押さえながら、買い物袋を籠に乗せた自転車を押して帰宅すると、何はともあれ空調のリモコンを操作して冷房を入れた。誰も居ない日中に暖められて淀んだ部屋の空気が撹拌されながら、急 […]
第四百八十四夜   朝食を終え、茶を飲みながら疫病騒ぎに孫も来ない退屈な盆休みに何をして過ごそうかと考えて、一昨日迎えたばかりのメダカのことを思い出し、餌の容器を片手に小さな庭へ出た。 といって、私の趣味で迎え […]
第四百八十三夜   「お近付きのしるしにと思いまして、ご迷惑でなければ」 と言って差し出した紙袋を訝しげに受け取ったご主人はしかし、その中身を確認するなり満面に笑みを浮かべ、 「ああこりゃ、こりゃあ。他所の人か […]
第四百八十二夜   勤め先を移って初めての夜勤中、先輩が二度目の定時の巡回にナース・ステーションを出た足音がだんだんと遠ざかり、階段を上って聞こえなくなった。先程教えられた順路を新人の私が一人で回ると申し出たの […]
第四百八十一夜   息子が夏休みの自由研究に天体観測をしたいと言い出して、まだ明るいうちに狭いベランダで三脚を立て、学習雑誌の付録に付いてきた小さな望遠鏡を組み立てて固定させられる。彼曰く、夕食を終えて日が暮れ […]
第四百夜   夏休み中の学校で開かれている水泳の特別授業を終えて帰って来るなり「痛いから見てくれ」と要求し、ワンピースの裾を捲くってこちらに背を向ける娘の尻に、確かに左右二つの大きな青アザが出来ていた。 薬を求 […]
第四百七十七夜   疫病騒ぎで思うように会って遊ぶことの出来ない夏休みの夜、クラスの有志十人程でメッセージ・アプリを使って百物語の真似事をした。もちろん十人で百話も語るのは無理だから、それぞれ一話ずつだったが、 […]
第四百七十六夜   終業式の朝、いつもの時刻にいつもよりずっと軽いランドセルを背負って家を出た。 学校は自宅から駅とは反対方向で、同じ路地に同年代の子が住んでいないから、交差点に出るまでは駅へ向かう大人達とすれ […]
第四百七十四夜   一学期末の定期試験を終えた午後の帰宅中、空に黒い雲の広がるのを不安に思っていると案の定、周囲が光ったかと思うと数秒の間を置いて雷鳴と雨粒とが降り掛かってきた。 鞄には折りたたみ傘が入っている […]
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