第四百四十九夜   借りてきた本の頁を夢中になって捲っているうち、いつの間にか雨はすっかり止んでいた。 本に栞を挟んで手提げに仕舞って自転車の前籠に入れ、サドルの下に挟みっぱなしのタオルで濡れたサドルとハンドル […]
第四百四十八夜   緊急事態宣言が解け、久し振りに社会人サークルの仲間でキャンプ場に集まった。陽の落ちる前に作った夕食を平らげ、持参したアルコールを飲みながら洗い物を済ませると火を囲みながら談笑をして過ごし、さ […]
第四百四十七夜   「ちょっとトイレ」 と宣言して映画の再生を止めてもらって席を立った。午前中に買い物に出たときにはよく晴れて風もない行楽日和だったが、このご時世ではなかなか行楽という気にもならず、午後はこうし […]
第四百十八夜   大晦日も午後の十時を回り、店番を妻に任せて出前先の食器の回収に出る。 夕方から配達して回った出前先のリストを持って軽自動車に乗り込み、エンジンを暖気しながらカー・ラジオを点けると、毎年聞き慣れ […]
第四百十七夜   クリスマスの早朝、白い息を吐きながら荷台に酒を積み終えると、いつものルートでいつもの配達に出掛ける。 凛と冷えて静かな街にトラックを走らせ、お客から預かった鍵で無人の店舗へ荷物を搬入し、回収す […]
第四百十六夜   ここ三ヶ月の間に、気付けば七キロ程も体重が増えていた。自分の体重に対して十パーセント、太り気味の飼い猫丸一匹よりも大きな質量が、腹やら尻やらに蓄えられたことになる。 仕事を終えての帰り道、途中 […]
第四百十四夜   不意のトラブルに対処するために帰宅が遅れ、久し振りに最終間近の電車で最寄り駅へ到着した。 軽食を摂る暇もなく、クリームと砂糖を入れた珈琲で誤魔化していた腹に何を入れるか考えながら、すっかり人出 […]
第四百十三夜   遅く起きた朝とも昼とも付かぬ時刻、ブランチの用意を終えて食卓に就くと、夫の携帯電話が着信を知らせる呼び出し音を鳴らす。彼は 「妹からだ」 と呟くと、行儀が悪いからと席を外し、先に食べていてくれ […]
第四百十二夜   給食の時間が終わって昼休みになると、クラスの中でいちばん脚の速い男子が弾けるように廊下へ飛び出して行く。 私もそれに続き、一応は駆け足禁止となっている廊下を駆け抜けて一階の渡り廊下へ出る。 雨 […]
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