第七百七十一夜    とある月末、今年度になって転属してきた同僚と二人で小さな事務所の一室で黙々と作業をこなしていると、不意に同僚が、 「ん?」 と小さく鼻から声を出した。彼女は私と違い、普段、作業中に独り言を […]
第七百七十夜    友人と映画を見た後、一緒に甘いものを突付きながら一頻り感想を話し合った。映画の話題も尽き、紅茶も冷めきったところで友人がトイレに席を立ち、こちらもぼちぼち退店の準備をしようかと荷物をまとめ始 […]
第七百六十八夜    二十二時まで一時間、店に着いてバックヤードで簡単な着替えを済ませ、店内に出る前に済ませておくべき仕事に取り掛かる。雑務は色々あるけれど、その多くは状況の動かない深夜になってから、お客の来な […]
第七百六十七夜    二日ぶりにすっきりと五月晴れの空の下、コンクリートに敷いたハンド・タオルの上に腰を下ろす。晴れた日には事務所の入ったビルの屋上でこうして日光浴を兼ねて昼食の弁当を食べるのが私の習慣となって […]
第七百六十四夜    たまの休日に遅く起き、顔を洗ってさっぱりしたところで昼前から酒でもと冷蔵庫を開けて、酒のストックを切らしていたことに気が付いた。この小さな贅沢のツマミに昨晩、出来合いの惣菜を買っておいたの […]
第七百六十二夜    事故で大幅に遅れた列車に朝から不機嫌に事務所に着くと、いかにも寝不足と言いたげな隈を目の下に作った同僚がデスクの前で虚ろな目をして珈琲をスプーンで掻き回していた。その余り窶れた様子に自分の […]
第七百六十一夜    昼食から帰ってくると同僚から、 「あのカメラ、駄目だったみたいです」 と、写真屋のロゴの入った薄い封筒を渡された。何のことかとキヲクを辿りながら封筒を開けると、ネガの収められたビニル・シー […]
第七百五十八夜    ふと目が覚めると付け放しになっていたTVの画面左上に九時を少し回った時刻が表示されていた。晩酌をしながらうたた寝をしてしまっていたらしい。浴衣にどてらを羽織っただけの姿だったので、まだアル […]
第七百五十七夜    スーツに付いた春雨の雫をタオルで拭っていると、今年新入の女の子が出社してきた。彼女は荷物をデスクに置きながら、 「おはよう……」 と言った後目を丸くしながら絶句して、 「……申し訳……あり […]
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