第九十一夜   ごつりと頭を打って気が付くと、黒い床の上へ頭を打ったらしい。辺り一面にぎっしりとひしめく仲間達も皆同じようで、気の付いたものは辺りをぐるぐる見回して首をかしげている。 ここは何処だ。 回りの仲間 […]
第八十九夜   パチリ、またパチリと硬い音が繰り返されるのが気になって薄目を開ける。私を起こさぬよう気を遣っているのか照明は常夜灯のみで薄暗い中、傍らのソファで女が爪を切っている。私からはまともに色も見えぬ暗さ […]
第八十八夜   稲刈りを終えても、冬支度に追われる村の秋は忙しい。それでも「雨の日くらいは相手をしろ」と庄屋様に呼ばれ、濡れ縁に腰掛けて碁を打っていた。なにしろ立派な屋敷で軒が深い作りなものだから、少々の秋湿り […]
第八十三夜   終電を最寄り駅で降りると、疲れきった頭と身体は習慣に引き摺られて半ば無意識に改札を出て家路を辿る。 駅前のロータリーを抜けて交差点を斜めに渡ると、そのまま公園へ入る。律儀に公園の周囲を周るより中 […]
第七十九夜   遂にこの日が来たのだ。 檻の中のマウスの背中を見た私は、一切の誇張なしに全身を震わせ助手たちの目も憚らず感涙を流した。 必死に学問を修めて、不妊治療の世界で夜に認められ、万能細胞の技術を学び、中 […]
第七十八夜   強くはない酒を無理に呑み、終電でようやく帰宅した。これも仕事のうちとはいえ、心にも身体にも負担は大きい。自分がまだ若いと思えるうちに、他の仕事に回らなければ。 そんなことを考えながら、兎に角風呂 […]
第七十七夜   柿や栗といった秋の味覚と引き換えに山の手入れを手伝ってほしいと友人に頼まれて引き受けた。早朝迎えに来た車に揺られて一時間、彼の実家で軽トラックに乗り換えて十五分ほど経ったろうか、山の中腹にぽっか […]
第七十一夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客 […]
第七十一夜   トイレに入ると個室の扉が三つ並んでいる。人はいない。が、奥から人の話し声が聞こえる。手前の個室の鍵を確認すると青い表示が見えるので中に入る。中央と奥とでおしゃべりをしているのだろう。 便座に腰を […]
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