第三百六夜   週に二度の買い出しのため、海風に車体を煽られながら軽自動車を走らせる。 もう何年も通り続ける道の両側は、しかしずっと殺風景なままだ。どうせ交わる車もない交差点の赤信号に掴まって車を停め、カー・ラ […]
第百九十五夜   雨の止んだのを見計らい、秋雨続きで溜まった洗濯物を抱えて、アパートから徒歩数分のコイン・ランドリィへ向かう。 人気のない店内に入ると、一人暮らしの一週間分の衣類を洗濯機へ放り込む。洗濯機を回し […]
第百九十三夜   連休前、比較的早い時間に仕事が片付いて安アパートへ帰宅できた。 肩に掛けた鞄の中の鍵を手で探りながら、蛍光灯の照らす共用廊下へ入ると、私の部屋の前に中年の男女が立っていて、ヒールの音にこちらを […]
第百八十九夜   大学のサークルで参加したイベントの後片付けに手間取って、終電を逃した。 しかし、家の近い友人を持つ者も少なくなく、始発の動き始めるまで居場所の無いのは私を含め五人で、駅から近い二十四時間営業の […]
第百七十一夜   母に頼まれた街での買い物を終えて実家へ戻る田舎道を走っていると、盆も終わりとなって幾らか涼しくなった風が窓から入って髪を揺らす。都会と違いすれ違う車も少なく、空気も綺麗だ。 走っているうちに、 […]
第百六十四夜   社用車を走らせて夏の夕暮れの住宅街からの帰り道、もう午後も七時を回ったというのに空は朱に染まって、通りもまだ明るい。 薄暮。黄昏時ともいう。 こういう中を運転していると、教習所で脅しのように言 […]
第百六十三夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百六十二夜   濡れタオルを頭に載せながら昼食休憩を炎天下の公園でとった後、木陰のベンチに腰掛けたまま噴水を眺めながら呆けている。南海上から押し寄せた水蒸気は九州から岐阜の辺りにまで豪雨をもたらして力尽き、関 […]
第百六十一夜   暑くなる前にと午前中に買い物を済ませたものの、強い日差しと湿度の高い空気のために、帰宅したときにはシャツを絞れるくらい汗をかいていた。 居間の冷房を付け、生鮮食品だけ冷蔵庫へ放り込んでから服を […]
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