第七十一夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客 […]
第六十七夜 「で、相談って何です?」 頼んだ料理が揃って乾杯し、グラスのビールを一口呑んで若い男が問う。卓の向かいには高級なスーツに身を包んだ四十絡みの紳士が土気色の顔をしてグラスをあおっている。グイグイとグラスを空け、 […]
第六十五夜 合宿初日に興奮で寝付かれぬ後輩たちにせがまれて、消灯時間を過ぎた中、キャンプ用にロウソクの灯の色を真似たLEDランタンをこっそり囲んでトランプ遊びをすることになった。三年が引退して部内では最上級生になったもの […]
第六十四夜 「不思議なことってのは、あるもんなんだなぁ……」 と、乾杯のビールを一口飲んだSEの友人が切り出した。 一ヶ月ほど前に彼の引っ越しを手伝った際に、相場より随分と家賃の安い物件を見つけたのだと喜々として語ってい […]
第六十三夜 深夜に轟音で目が覚める。思い返せば数秒前、閉じた目の向こうがちらりと明るくなった気もするので、きっと雷だろう。そう思うと同時に、ベランダのコンクリートを叩く雨音が聞こえてくる。 音で目覚めたのにも関わらず、そ […]
第六十夜 ここ数週間、スマート・フォンの電池の減りが異様に早い。そろそろ寿命かと店へ持っていって調べてもらうと、電池容量は正常で、各種の設定や電波状況次第ではそういうこともあるからと、一通りの助言で済まされた。電波の不安 […]
第五十夜 「お、そろそろだな」。 友人の声に壁掛け時計を見やると、十時半を三秒、四秒と過ぎてゆくところだ。 「本当に?」 と尋ねると、 「後三十秒で分かるさ」 と笑って返す。 最低限の家具だけが無機的に並ぶこの部屋の主曰 […]
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