第百五十三夜   「この間、変なものを見ちゃってさ……」 と、半ば空いたビールのグラスを片手に友人が苦笑いを浮かべる。何の話だと水を向ける私に、 「本当に変な話なんだが……」 と前置きして彼は話し始める。 大型 […]
第百五十一夜   午前中の外回りに区切りが付いて、どこかで昼食をと思いながら社用車に乗り込む。 曲がりくねった道を抜けて郊外の幹線道路へ出て、白いセダンの後に付いて走る。この手の道沿いには広い駐車場を備えたファ […]
第百四十七夜   買い物へ出掛けて都内のターミナル駅で乗り換えようと長い階段を登ると、スーツ姿のまだ似合わぬ若い女性がホームの端に腰掛けている。 しかし、混み合ったホームの中で彼女に注目しているのは多くないよう […]
第百三十八夜   改札を出て駅前の繁華街を独り早足で歩く。駅前の小さな繁華街の狭い歩道を歩いていると、スーツ姿の二人連れに追い付く。どこかの店で一杯引っ掛けようという算段らしく、どこの店が良いか相談しながらの二 […]
第百三十七夜   漫画喫茶のリクライニング・シートに背を預けながら目を閉じている。どうも、こういうところではしっかりと寝られない。うつらうつらと舟は漕ぐのだが、頭の何処かで、財布を取られはしまいかとか、明日寝過 […]
第百三十六夜   畳の部屋の中央に据えられた丸い卓袱台には簡単な朝餉が載せられ、見知らぬ一家が忙しくも楽しげに箸を動かしている。 それをガラスのあちらに歪んだ形で眼下に眺める私は、どうやら神棚に置かれているらし […]
第百二十五夜   いつの頃からか忘れたが、毎週金曜の深夜になると携帯電話へ見覚えの無い番号から電話が掛かってくるようになっていた。勿論、その電話に出たことは一度もない。 今日もいつもの知らない番号からの電話と確 […]
第百二十二夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百十六夜   何年か振りに、この地域にしては大雪と呼べるような雪の降った晩、寝室の窓を叩く音がしてカーテンを開くと、級友のガキ大将が満面の笑みをたたえて窓の外に浮いていた。正確には雨樋を伝い登り、それにしがみ […]
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