第七百九十七夜    深夜勤務のためにバック・ヤードへ入って着替えを済ますと、今日はシフトに入っていないはずのアルバイトの高校生が笑顔で立っていた。彼女が笑顔なのはバイトの面接で初めてあって以来いつものことで、 […]
第七百四十八夜    関東平野の北部の街の大学で知り合った友人と山へサイクリングに出掛けた。後期の試験とレポートが片付いて多少暇ができたのだが、帰省は正月にしたばかりだし、かといって街に学生の財布に相応しい娯楽 […]
第七百四十二夜    連休明け、同僚が何やら浮かぬ顔をしてやってきた。朝から随分とお疲れかと尋ねると、小さな子供がいるから体力的に疲労をするのは確かだが、浮かぬ顔を隠せていなかったのならそれは別の要因だと言って […]
第七百二十二夜    電話が鳴って、夕飯の支度に掛かっていた手を止めた。電話機のディスプレイには二年前まで息子のお世話になっていた幼稚園の名前が表示されている。はて今更何の用かと首を傾げながら受話器を取ると、裏 […]
第七百十五夜   大風の後片付けに男手が欲しいと実家に請われ、祝日前の夜に車を走らせて帰省した。 疲れているから明日の片付けのために早く寝たいというのを父に止められ、晩酌に付き合わされる。傍らではテレビの特番で […]
第六百八十四夜   焚き火で沸かした湯で珈琲を淹れながら同じ湯で濡らしたタオルで顔を拭いていると、薪を拾いに行っていた友人二人が戻ってきた。両腕には虎ロープで束ねた茶色く枯れた笹や杉の小枝を抱えている。炭に火を […]
第六百六十九夜   午前中に一仕事を終えると、取引先の偉い人に昼食をご馳走するといって近所の鰻屋に案内された。率いられるがままに席に就き、出されたおしぼりで手を拭きながら、彼の注文が終わるのを待つ。 注文を終え […]
第六百三十夜   放課後、体操服に着替えて校庭へ出ると、暫く部活を休んでいた友人が爪先を地面に付けてぐるぐると足首を回していた。 「もう良くなったの?」 と後ろから声を掛けると彼女は振り向いて頷き、 「お陰様で […]
第五百夜八十七   いつもの時間に家を出ていつものように息子の手を引いて歩いていると、いつもの大型犬を連れたご婦人と出会って会釈をした。いつものように息子が垂れた耳の間を撫でる間、犬はいつものように舌を出しなが […]
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