第四百二十九夜

 

午後の陽の柔らかく当たるベランダで並べたプランタを弄っていると、尻のポケットに入れたスマート・フォンが短く振動した。

剪定した葉や落ち葉をゴミ袋に入れてその口を縛り、生ゴミ用のバケツに片付けて部屋へ戻り、手を洗ってスマホを取り出すと、暫く会わない友人からのショート・メッセージで、電話番号を変えたから電話帳への登録を改めてほしいとのことだった。
総務省からお叱りを受けて大手が料金プランを見直したとかいうニュースがあったから、何かお得なプランにでも乗り換えたのだろうか。いや、それで会社を変えても、電話番号を維持することは出来たはずだ。

下らぬことだが気になって、何か電話番号を変えたくなるような事情でもあったのかとメッセージを返すと、二、三行ずつの短文に分けて返事が返ってくる。

昨日の夕方、見知らぬ番号から電話が掛かってきた。心当たりの無い電話など詐欺か何かだろうと用心し、随分長いこと呼び出すのを放っておいた。その間に表示されていた電話番号をパソコンから検索してみるが、営業や詐欺のタグ位の情報は出てこない。

呼び出しが終わって二分も経つと、再び同じ番号からの着信が表示され、またしつこく呼び出しが続く。こうなると、誰か知り合いか、どこかで買い物をした店やメーカからの大事な連絡かもしれないなどと不安になって、終に電話に出てしまった。

通話ボタンを押すなり、早く電話に出ろと罵倒され、何時にどこそこへ集合だから必ず何だかを持って来いと捲し立てて直ぐ通話が切れた。酷く荒れた声色と抑揚の激しい下品な喋り方のせいで、内容はほとんど聞き取れなかった。

よくわからないが、まあ間違い電話に違いない。携帯電話が生まれて以降、電話端末には必ずといっていいほど電話帳機能というものが付いているはずで、それを使いこなせる年代なら間違い電話などめったにするものではなかろう。が、電話帳機能に連絡先を登録して置くと不都合なことがある人々というのもいるのかもしれない。

そんなことを考えつつ夕飯を済ませ、風呂に入り、映画を見ながら晩酌を始めたところ、再び電話が鳴った。見れば先程の間違い電話を掛けてきた番号で、親切に間違いだと指摘してやる義理もないので放っておくことにした。ところが、これがいつまで経っても鳴り止まない。仕方ないので画面上の着信拒否を押し、相手の番号を拒否リストに追加すると、数分後に別の見知らぬ電話番号から着信が来る。

それを三度繰り返してもまだ掛かってくる。諦めて電源を切ったが、恐ろしくて一睡も出来ぬまま朝を迎え、朝一番に新規契約に出掛けた。次いでこれまでの番号を解約しに店に出向き、処理上必要だと言われて電源を入れると、間髪入れずにまた着信があったのだそうだ。

間違い電話の本来の相手は一体何をしでかしたのか、万一自分の電話番号から住所が漏れたりしないか、そんなことが延々と頭の中を巡って気が狂いそうだと締め括った彼をどうすれば安心させられるのか、送り返す言葉は見つからなかった。

そんな夢を見た。