第三十二夜

たまには手を抜こう。

そう思いながら机に向かい、日記帳を開いて万年筆を執る。
今日は低気圧のせいか頭が重いし、明日は朝早くから仕事が入っている。気合を入れて書いたところで誰が読む訳でなし、こんな日くらいは手を抜いても罰は当たるまい。

つらつらと筆を動かし、最後の句点を打つ。

ざっと書き上がった文章を眺める。

と、昼の出来事を書き留めておこうと思い立って再び筆を走らせる。

こんなものかと思ったところで筆を止め、どうにも納まりが悪い気がして言葉を足してゆく。

インクが乾くのを待つ間に書いたものを読み直すと、足した言葉のせいで釣り合いが取れなくなったような気がして、折角手を抜くべく簡潔に記しておいた冒頭部分に言葉を足し始める。

気が付けば、普段と変わらぬ時刻に文章量。後から言葉を加えた分だけ、普段よりも見苦しい書面になっただけである。

これはいただけない。体調の悪い時、予定の詰まっている時などに備えて、手を抜きながらも体裁を整える練習をしなければなるまい。

少しでも睡眠時間を稼ごうと、インクは寝ている間に乾くのを待つことにして布団に入り、暫くは手を抜く練習でもしようかと思いながら目を閉じる。

そんな夢を見た。