第十七夜

ふと気がつくと、水が極めて冷たい。眼下の孔から覗く外の景色は夜にしては明るく、月夜なのだろうことが推測される。

私は横倒しの植木鉢の上部に溜まった比較的温かい水域から鈍い体をくねらせて孔を抜け、水面近くへ泳ぎ出る。こんな夜にふと目が覚めるのは、決まって水面に氷の張る頃なのだ。

幸いなことに、円い月が円い水面を冴え冴えと照らしている。何が幸いかと云えば、私は水の凍ってゆくさまを眺めるのが好きなのである。

既に瓶の縁の水面が円く凍りついている。じっと眺めていると、氷の下と瓶の境目から、薄く鋭い氷の刃が斜め下に伸びてゆく。伸びる先で水面が凍り、また刃が伸びる。私の胸鰭ほどの間隔で、瓶の縁からぐるりと氷の刃が伸び、伸びる先が凍る。

眺めているうちに伸びた刃同士が瓶の中央でぶつかって、水面は薄い氷に覆われてしまった。そこから斜めに傾いた氷の刃が等間隔で並んで、月の光を反射して輝いている。刃と刃の間の水が少しずつ凍って氷が厚くなると、その分だけ刃の先の水も凍って刃が伸びる。表面が厚くなるごと、刃が伸びるごとに月明りの反射具合が変わるので、あちらが光ったかと思えば消え、こちらが光ったと見ればそちらが光る。

飽きずに見ていると、すぐ目の前まで氷の刃が降りてきて我に返る。今日は今年一番の冷え込みだ。

変温動物である私は寒さには弱い。餌の羽虫も少ない季節であるし、そもそも水面が凍ってしまっている間は食事にありつく見込みもない。無駄な体力を使うわけにもいかぬので、尾鰭を引かれる思いで植木鉢の孔をくぐり、周囲に比べれば幾分かは温かい水の中で、もう暫く眠りながら春を待つことにした。

そんな夢を見た。