第百五夜   仕事柄、正月は掻き入れ時で休みとは縁が無い。その分、他の時期に纏まった休みを貰えるが、親とも郷里の友人とも都合が合う訳でなし、もう何年も実家へ戻っていない。 年が変わるといっても、正月セールのため […]
第百四夜   忘年会の酒の残って重い頭と体とを無理に布団の外へ引きずり出して早起きをした。昨晩、酒席特有の特に意味の無い会話を上の空で聞き流しながら、年末をできるだけぐうたら過ごすための計画を立てており、その第 […]
第百二夜   小さな商談のために、初対面の女性と駅前で待ち合わせをしていた。約束の十分前からふくろうのオジェの前に立っていると伝えたが、たっぷり五分を待たされて漸く先方から声を掛けられた。 「すみません、私も五 […]
第百一夜   買い出しから帰ると、妹が馬面になっていた。 と言っても、極端に面長になっていたという意味ではない。文字通り、首から上が馬のものになっていたのである。クリスマス用にパーティ・グッズでも買ってきてから […]
第九十八夜   秋雨の冷たく降るとはいえ、たまの休日の勿体なさに散歩を兼ねて買い物へ出たが、夕刻の帰途もなお傘を打つ雨の勢いは衰えず、コートの襟に首をすくめながら、点々と街灯の灯る橋を渡る。渡った橋を振り返りビ […]
第九十三夜   めっきり冬めいて水気の多い地面がすっかり冷えきっているためか、店の空気はなかなか暖まらない。 ココアでも飲もうと、カウンター裏の小さな台所で牛乳を鍋に入れて火にかける。 ココア・パウダーの包装の […]
第九十一夜   ごつりと頭を打って気が付くと、黒い床の上へ頭を打ったらしい。辺り一面にぎっしりとひしめく仲間達も皆同じようで、気の付いたものは辺りをぐるぐる見回して首をかしげている。 ここは何処だ。 回りの仲間 […]
第八十九夜   パチリ、またパチリと硬い音が繰り返されるのが気になって薄目を開ける。私を起こさぬよう気を遣っているのか照明は常夜灯のみで薄暗い中、傍らのソファで女が爪を切っている。私からはまともに色も見えぬ暗さ […]
第八十八夜   稲刈りを終えても、冬支度に追われる村の秋は忙しい。それでも「雨の日くらいは相手をしろ」と庄屋様に呼ばれ、濡れ縁に腰掛けて碁を打っていた。なにしろ立派な屋敷で軒が深い作りなものだから、少々の秋湿り […]
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