第百八十七夜   父方の祖母の法事で、記憶にある限り初めて父の実家へやってきた。その祖母というのがどうも母と折り合わず、私の物心付くより前に大喧嘩をして以来、ほとんど往来が失くなったのだという。 定型句のように […]
第百八十六夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百八十五夜   酔い潰れた連中の世話を一通り終え、寝る前にさっぱりしようと大浴場へ来ると、深夜ということもあって人気がない。折角海沿いの斜面に設えられた露天風呂の景色は闇の中だが、そちらは朝風呂でのお楽しみと […]
第百八十四夜   夕方から夜通し車を走らせて、東北のある山中の川岸へ付いたのは丑三つ時の闇の中だった。 高速道路は混む様子もなく、禁漁期間前最後の休日と意気込んで張り切りすぎたか。朝間詰めまでは暫くある。夜道の […]
第百八十三夜   雨に降り籠められて休日が退屈にり、ふと暫く振りに自宅のデスクトップ・PCの電源を入れる。仕事のデータを持ち帰ることができなくなったこと、簡単なネット・サーフィンくらいはタブレットで済ませてしま […]
第百八十二夜   夫が週末に出掛けるというので、いつもより多めの食料を買い込んで車に積んだ。ほんの数キログラムの差だろうが、アクセルもブレーキも若干聞き難いような気がするから不思議なものだ。 大通りを折れて自宅 […]
第百八十一夜   仕事を終えて帰宅し、レジ袋から酒とツマミを取り出して座卓に広げる。 独り酒に静寂は心がささくれるのでテレビを点ける。何が見たいというのではないが、恐怖映像特集とやらを見つけ、まだまだ厳しい残暑 […]
第百八十夜   昼寝から目が覚めて伸びをすると、首元でチリンと耳に刺さる金属音がする。おやと思って俯くとまたチリンと鳴るが、視界に入る限り何もない。どうやら首輪の下に鈴が付けられているらしい。 音に気付いた同居 […]
第百七十九夜   幾らか秋めいて涼しくなった夜風に吹かれながら、今しがた見終わった映画のディスクを手に、幹線道路の脇の歩道を歩く。 週末はレンタル・ビデオ店で古い映画を借りて酒を飲む。学生時代に付いた習慣で、社 […]
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