第百七十九夜   幾らか秋めいて涼しくなった夜風に吹かれながら、今しがた見終わった映画のディスクを手に、幹線道路の脇の歩道を歩く。 週末はレンタル・ビデオ店で古い映画を借りて酒を飲む。学生時代に付いた習慣で、社 […]
第百七十八夜   アルバイト先のカラオケ店へ着くなり、バックヤードで店長から、 「例の部屋、大掃除するから着替えたら来い」 と言われて気が重くなる。 今年の春先から異臭のする部屋があり、利用客から人死が出ている […]
第百七十七夜   畑仕事を終え、木陰で弁当を広げようとしてうっかり握り飯を落としてしまった。握り飯は雑木林の斜面をころころと転がり落ちたかと思うと、不意に視界から消える。 土まみれになったそれを食う気はないが、 […]
第百五十一夜   残業をしていると、携帯電話に友人から、 「家に帰りたくない」 と連絡が入った。三ヶ月ほど前に挙式したばかりの男の台詞ではない。 「自分にそういう趣味はない」 と返すと、話だけでも聞いてくれと食 […]
第百七十五夜   夏の終わりに女子会でもと、大学の友人四人で集まって酒宴を開いた。   ちょうどテレビで心霊番組が流れていたので、いかにも合成臭いとか、出演者の怖がり方がわざとらしいとか、今のはよく出来た話だと […]
第百七十四夜   夏の終わりにシーズンをやや外れて安くなった学生向けのプランを利用した旅行を友人から提案され、なんとか金と時間の都合を付けて参加することになった。 しかし、ターミナル駅の高速バス乗り場へ早朝に付 […]
第百七十三夜   麻雀に誘われて友人宅へ招かれた。彼のアパートへは初めて訪ねるのだが、スマート・フォンへ送られてきた地図情報のお陰で特に迷うこともない。便利な世の中になったものだ。 酒とツマミの入ったレジ袋を片 […]
第百七十二夜   「この後、幽霊を見に行かないか」と誘われて、思わず、 「は?」 と間抜けな声を上げてしまった。 頭から外した手拭いで顎の下の汗を拭いながら誘ってきたのはこの剣道クラブで知り合った中年男だ。クラ […]
第百七十一夜   母に頼まれた街での買い物を終えて実家へ戻る田舎道を走っていると、盆も終わりとなって幾らか涼しくなった風が窓から入って髪を揺らす。都会と違いすれ違う車も少なく、空気も綺麗だ。 走っているうちに、 […]
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