第八百四夜    先輩達の怪談一時間ほど続いただろうか。 「じゃあ、私で最後ね」 と語り部の席に着いて宣言した先輩が、 「B棟に入ってる新入生は挙手して下さい」 と微笑むと、私を含めてぱらぱらと手が挙がる。   […]
第八百一夜    足の極端に遅い台風がようやく去って、一週間ぶりに街まで下りて買い物をした。その帰り、大量の食料や物資を積んで山道を登る足回りは重く、木の葉どころか枝ごと折れて飛ばされてきたものが散乱する中を慎 […]
第七百九十八夜    一週間の疲れを風呂で流し清潔な部屋着に着替えて冷房のよく効いた部屋へ戻ると、乾いて冷たい空気に急速に気化熱が奪われて心地好い。冷蔵庫から酒を取り出し、買い物袋からツマミをテーブルへ並べると […]
第七百九十七夜    深夜勤務のためにバック・ヤードへ入って着替えを済ますと、今日はシフトに入っていないはずのアルバイトの高校生が笑顔で立っていた。彼女が笑顔なのはバイトの面接で初めてあって以来いつものことで、 […]
第七百九十四夜    立秋を過ぎたばかりの盆休みのはじめ、朝からカメラを持って上野の不忍池へ蓮の花を撮りに向かった。昭和に取り残されたような下町の住宅街からそこまでは自転車で二十分ほど、家を出て陽射しの強さ、空 […]
第七百九十三夜    週末の家事仕事を一通り片付けた土曜、まだ暗く成りきらぬ夕方の終わり際から、配信サービスの映画を観ながら簡単なツマミで酒を飲んでいた。と不意に視界の隅がちらつく。暫く様子をうかがうに、眺める […]
第七百八十八夜    最寄りの駅から私鉄や旧国鉄を乗り継いで一時間半掛けて辿り着いた駅前は観光地らしく開発されていた。が、そこから持参した自転車に乗って山道の入口を目指すと、辺りに昔ながらの山村らしい農地と作業 […]
第七百八十七夜    梅雨ももうじき空けようという蒸し暑い日の夕方、試験前の勉強会と称して友人二人がやってきた。三人とも上京組で、比較的大学に近く、男三人がノート類を広げて座るスペースが確保できるのが我が家だけ […]
第七百七十九夜    昼食時を少し過ぎ、出勤している社員の皆で職場近くの少しだけ高級なご飯屋さんへぞろぞろと向かいながら、 「今年は梅雨入りが遅くてもう大分暑いから、夏バテしないように精のつくものを頼んで下さい […]
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