第七百八十八夜    最寄りの駅から私鉄や旧国鉄を乗り継いで一時間半掛けて辿り着いた駅前は観光地らしく開発されていた。が、そこから持参した自転車に乗って山道の入口を目指すと、辺りに昔ながらの山村らしい農地と作業 […]
第七百八十七夜    梅雨ももうじき空けようという蒸し暑い日の夕方、試験前の勉強会と称して友人二人がやってきた。三人とも上京組で、比較的大学に近く、男三人がノート類を広げて座るスペースが確保できるのが我が家だけ […]
第七百七十九夜    昼食時を少し過ぎ、出勤している社員の皆で職場近くの少しだけ高級なご飯屋さんへぞろぞろと向かいながら、 「今年は梅雨入りが遅くてもう大分暑いから、夏バテしないように精のつくものを頼んで下さい […]
第七百五十八夜    ふと目が覚めると付け放しになっていたTVの画面左上に九時を少し回った時刻が表示されていた。晩酌をしながらうたた寝をしてしまっていたらしい。浴衣にどてらを羽織っただけの姿だったので、まだアル […]
第七百五十四夜   工房の責任者との商談はお互いに笑顔で纏まった。こちらの提示した条件に彼は始め狐に抓まれたような顔をして、眉に唾をつけるようにしてこちらの顔色を窺っていた。 こちらの条件が破格だったというより […]
第七百五十三夜    用を足してトイレを出ると、冷たい強風が首筋から体温を奪って首が竦んだ。彼女の姿はまだそこになく、出てくる前に何か温かい飲み物でも買ってしまうべきか、彼女の出てくるのを待つべきか悩みながら、 […]
第七百三十八夜    冬至を少し過ぎて帰省した際、最寄り駅のロータリで幼馴染の家の父親にばったり出会った。大学に入るまでは私の一家、彼の一家ともうひと家族とで、一緒にキャンプや釣りに出掛けたり、互いの家にお泊り […]
第七百三十一夜    正月休みに帰省して年を越し、二日になると早くも皆暇を持て余してきた。来年が受験の甥に請われて勉強を教え、集中力の切れてきたところで一休みにしようと席を立ち、マグカップを片手に台所へ珈琲を淹 […]
第七百二十三夜    試験期間に入って部活がなくなり、帰宅した玄関が明るいのは久し振りだった。玄関ドアのノブを回してそっと引くと、予想通りと言うべきか鍵が開いている。一人のときは施錠をしろと上階にいるだろう妹へ […]
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