第百九十夜

 

突然の休講で昼休みが長くなり、学食で食事を終えると手持ち無沙汰になった。同じ境遇の友人と連絡が付き、駅前の雑貨屋を見て回ることにして正門前で待ち合わせる。

早足に正門へ向かうと、その脇でリュックサックを背負った白人夫婦と件の友人とが、互いに困った顔をして何やら話している。ここのところ外国人観光客が増えて、我が大学の古い建物も観光地として人気なのだそうだ。

彼女は私を見つけると手招きをして呼び、駆けつけた私に写真を撮ってあげてくれと言う。

どうやら彼女が写真を撮るように夫婦から頼まれ、断っているところだったのだろう。言われるままにカメラを受け取り、幾度かシャッターを押して彼らに返し、簡単な遣り取りをすると夫婦は満足げに大股で去ってゆく。

暫くその後姿を見送ってから友人を振り返ると、彼女からも丁寧に礼を言われる。
「今時のカメラなんてボタン一つで綺麗に撮れるんだから、撮ってあげればよかったのに」
と言うと、
「私、写真ダメなの。撮るのも撮られるのも」
と俯く。

写真写りが気に食わぬからと、撮られるのが嫌いなのは私も一緒だ。が、
「撮る方は機械がほとんど勝手にやってくれるから、一度やってみたらいいのに」
と食い下がる私に彼女は、
「ううん、違うの。私が撮ると絶対に変な写真になるんだよね、変な光が入ったり。ブスに写るのは真実だから諦めてるんだけれど」
と、眉を八の字にして伏目がちに笑った。

そんな夢を見た。