第四百六十一夜

 

買い物から帰宅した私を、西日に当たって橙色に染まるキャット・タワーの中段に寝ていた猫が面倒くさそうに首を上げてこちらを見た。目が合うとそろそろ夕食と気付いて立ち上がり、背を丸めて伸びをしてから床に降り、キャリィ・ケースの前に歩いて行く。

普段は部屋の中を好きに動き回らせているのだが、食事にちょっかいを出さぬようその間だけは餌で釣ってキャリィ・ケースへ誘導して隔離しておくようにしていた。今では腹が減ると自分からキャリィ・ケースへ向かうようになった。狭く視界の遮られた中での食事は、猫にとっても快適だったのかも知れない。

手を洗い、猫の餌を出してケースの扉を閉めてから、買ってきたものの表面をアルコールで拭いて片付け、ツマミの惣菜と酒を用意して部屋に戻る。パソコンを付け、適当な映画を流しながら晩酌を始めると、子供の頃に見たホラー映画だったのだが、懐かしさのためかこれがなかなか面白い。

暫く見入っていると、部屋の隅からカサカサと乾いた音が聞こえる。ゴミ箱に被せたビニル袋で猫が遊んでいるのだろう。買い物をすれば手に入った頃なら兎も角、わざわざ買わなければならない昨今、ゴミ捨てに使えないレベルまで痛めつけられては困るので、余り破らないでくれとモニタを見つめたまま声を掛ける。暫く音が止まったかと思うとまたカサカサと始まり、まあ一枚一枚が値の張るものでもないので諦めることにする。

暫くしてキリの良いところで映画を一時停止し、便所に立つ。用を足して部屋に戻り、ゴミ袋の弄られていた事を思い出して確認するが、特にゴミを散らかした様子も無ければ、持ち手の部分が爪で裂かれた様子もなく安心する。折角腰を上げたのだ、映画の続きを見る前に猫の餌皿だけ回収しておこう。

そう思ってキャリィ・ケースを振り返ると、とうに食事を終えた猫が扉の中から早く出せとこちらを睨んでいるのだった。

そんな夢を見た。