第二百七十八夜/h3>
 

日が暮れてなお蒸し暑いホームから車両へ入ると、よく冷えて乾いた空気がシャツの汗と体温を急激に奪っていった。それだけで、一日の仕事を終えそれなりの達成感と大きな疲労感を抱えた身体に多少の活力が戻ってくるのは、軽度の熱中症か何かなのだろうか。

適当に周囲に空いてる席を探し、二列ならんだ席の通路側に荷物を、窓側に腰を下ろす。それだけで何か縄張りのような個人的な空間が出来たような気がして寛げるのだから、人間というのは不思議なものだ。

伸びをしながらちょっと迷い、荷物から梅酒のアルミ缶を取り出して開け、一口舌の上を転がす。

そのまま窓外を流れてゆく街の灯を呆やりと眺めながら酒を舐めていると、新横浜を過ぎたところで窓外はすっかり暗く、缶の中身も寂しくなった。

荷物のビニル袋から中の弁当とビールを取り出して棚に置き、紐を解いて袋を剥いで、潰した空き缶とともにビニル袋へ仕舞う。

割り箸を割って弁当に手を合わせる。ちょっと贅沢な晩餐である。

蓋を取ると、胡麻の振られた俵型のご飯とシウマイが行儀よく並んでいる。蓋をビニル袋へ仕舞うと、前の座席の辺りでコトリと小さく音がする。前の座席の客が音か匂いかへの抗議に足でも鳴らしたかと、座席の隙間から様子を伺えば空席で、いよいよ安心して弁当に集中できると頬が緩む。

醤油差しを摘もうとして、違和感を覚える。弁当に大きな隙間がある。数えてみると、五つあるはずのシウマイが四つしか無い。

蓋の裏にでもくっついたかと思ってビニル袋を漁っても、そこにシウマイの姿はない。

まさかと思いながら恐る恐る身を屈め、座席の下を覗き込むと、そこには一つのシウマイが、ぽつりと転がっていた。

そんな夢を見た。

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