短編 Archives - 11ページ目 (60ページ中)

第七百五十四夜工房の責任者との商談はお互いに笑顔で纏まった。こちらの提示した条件に彼は始め狐に抓まれたような顔をして、眉に唾をつけるようにしてこちらの顔色を窺っていた。こちらの条件が破格だったというより […]

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第七百五十三夜

橘偲 -

3月 21

第七百五十三夜　用を足してトイレを出ると、冷たい強風が首筋から体温を奪って首が竦んだ。彼女の姿はまだそこになく、出てくる前に何か温かい飲み物でも買ってしまうべきか、彼女の出てくるのを待つべきか悩みながら、 […]

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第七百五十二夜

橘偲 -

3月 17

第七百五十二夜　トイレから出てハンカチで濡れた手を拭きながら、「到着するなり申し訳ありません」と、丸テーブルに書類やタブレットＰＣを並べていた女性へ、苦笑しながら軽く頭を下げた。「腸炎か何かですか？ […]

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第七百五十一夜

橘偲 -

3月 14

第七百五十一夜　仕事を上がろうとしたタイミングで足止めを喰らい帰りが遅れてしまった。薄暮の帰路を早足で、既に学童から帰っているはずの息子の元へ急ぐ。春分も間近になって日の暮れきるのにはまだ時間があるとはい […]

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第七百五十夜

橘偲 -

3月 10

第七百五十夜　日射しこそ春めいて暖かながらまだ空気の凛と冴えた朝、通勤列車を降りると改札へ向かう人混みに見知った華奢な背中を見つけた。ちょうど昨日一人で訪れた映画館でたまたま鉢合わせ、せっかくだからと上映 […]

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第七百四十九夜

橘偲 -

3月 7

第七百四十九夜　放課後の職員室で学年末試験の解答用紙を整理していると、隣の机へ教頭がやってきて、「これ、例のもの」と同僚へ掌大の白い紙袋を渡した。同僚はさも嬉しそうにそれを受け取り、お代はといって財布 […]

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第七百四十八夜

橘偲 -

3月 3

第七百四十八夜　関東平野の北部の街の大学で知り合った友人と山へサイクリングに出掛けた。後期の試験とレポートが片付いて多少暇ができたのだが、帰省は正月にしたばかりだし、かといって街に学生の財布に相応しい娯楽 […]

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第七百四十七夜

橘偲 -

2月 29

第七百四十七夜　在宅ワークを終えて夕飯の買い物から帰り、いつもの習慣で郵便受けを覗くと、宅配の不在票が入っていて首を傾げた。郵便受けは毎日カラにしているし、今日は一日中在宅で、呼び鈴が鳴らされていれば気が […]

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第七百四十六夜

橘偲 -

2月 25

第七百四十六夜　学年末試験まで一週間となった放課後、美術準備室へ忘れ物をしているのに気が付いて、仲の良い友人二人を誘って取りに行った。　準備室は普通の教室の三分の一ほどの広さで、廊下側の扉は施錠され、普 […]

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