第五百夜   先生に不意に背中を叩かれ、慌てて、 「よろしくお願いします」 と頭を下げると、横一列に並んだ先輩や同学年ながら他学級の生徒達も口々によろしくと答えたり、小さく会釈を返してくれた。 何もこんな時期に […]
第四百五十七夜   夕食を終えてソファ・ベッドに横になり、同じく夕食を終えてご満悦の飼い猫を腹の上に載せながらテレビの映画を眺めていた。 映画がコマーシャルに入ってこの機に便所へと思い、猫を抱き上げて退かして洋 […]
第四百四十六夜   数カ月ぶりに緊急事態が解除され、久し振りにお茶のお稽古の案内が届いて、教室へお邪魔した。 お茶室に入ってまず驚いたのが、低い機械音を鳴らす空気清浄機で、 「換気をと言われても、お茶室では難し […]
第四百三十六夜   目元をハンカチーフで押さえながら幾度も深々とお辞儀をし、礼の言葉を繰り返しながら、小さな自転車を積み込んだ大きなワンボックス・カーに乗り込んだ若い夫婦はゆっくりと去って行くのを見守っていると […]
第四百三十五夜   草木も眠る丑三つ刻、書類仕事を一通り片付け、週刊誌を捲りながら鳴らない電話の番をしていた。 小規模のタクシィ会社の事務所で、客からの電話と運転手からの電話とを、深夜帯は一人で担当する。終電か […]
第四百三十二夜   社外での用事を終えて乗り込んだ夕方の列車は、このご時世とまだ定時前ということもあってかなり空いていた。 それでも扉付近の席は埋まっており、ソーシャル・ディスタンスを意識して車両の端の空席に腰 […]
第四百二十八夜   髪にタオルを巻いた妻に促され、風呂に入って体を洗っていると、しばらくして洗面所兼脱衣所からドライヤの音が聞こえ始めた。 美容院の滞在時間を短くしたいとの理由から、元は肩より下まで伸ばすことの […]
第四百二十七夜   このご時世で年末年始に帰省できずにいた郷里の様子が、朝食を作りながらBGMに流していたテレビのニュースに映った。 何やら感染率が急激に高まっただか、市内の病院でクラスタが発生しただかで、見覚 […]
第四百十四夜   不意のトラブルに対処するために帰宅が遅れ、久し振りに最終間近の電車で最寄り駅へ到着した。 軽食を摂る暇もなく、クリームと砂糖を入れた珈琲で誤魔化していた腹に何を入れるか考えながら、すっかり人出 […]
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