第四百二十三夜   早朝、自転車に乗って川沿いの道に出ると、周囲から一段下がった川に向かって滑り降りてくる冷気が溜まるのだろう、一段と冷たい空気が制服の袖や襟元から吹き込んで来た。 疫病騒ぎで体育館での体育や部 […]
第四百二十二夜   仕事初めから間もなく、再び不要不急の外出を避けるようにお達しが出た。 幸いにも夫婦揃ってテレ・ワークで済む仕事をしているからたまの買い物以外に外出の必要はないのだが、通勤の際の最低限の運動さ […]
第四百二十一夜   隣に若い夫婦が越してきて一年が経った。 定年退職した上に外出自粛とあって、屋内でもできる趣味にと将棋を始めたのだが、昼食を終えて腹のこなれた頃合いに将棋盤を引っ張り出すと、平日はほとんど毎日 […]
第四百二十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、そういえば?なんだけど、宇宙人とかUFOとかって、興味無いの?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が […]
第四百十九夜   正月だからといって特にすることもなく、かといって出掛けるのも憚られ、本棚に並んだ本を適当に手に取っては目を通して過ごしている。 元々目の早い質で、しかも一度は読んだことのある本ばかりだから、中 […]
第四百十八夜   大晦日も午後の十時を回り、店番を妻に任せて出前先の食器の回収に出る。 夕方から配達して回った出前先のリストを持って軽自動車に乗り込み、エンジンを暖気しながらカー・ラジオを点けると、毎年聞き慣れ […]
第四百十七夜   クリスマスの早朝、白い息を吐きながら荷台に酒を積み終えると、いつものルートでいつもの配達に出掛ける。 凛と冷えて静かな街にトラックを走らせ、お客から預かった鍵で無人の店舗へ荷物を搬入し、回収す […]
第四百十六夜   ここ三ヶ月の間に、気付けば七キロ程も体重が増えていた。自分の体重に対して十パーセント、太り気味の飼い猫丸一匹よりも大きな質量が、腹やら尻やらに蓄えられたことになる。 仕事を終えての帰り道、途中 […]
第四百十五夜   一週間分の食料を買い込んで、両肩に大きな買い物袋を掛けてマンションの共用玄関のガラス戸を潜り、重い荷物がずり落ちぬよう気を遣いながらオートロックを開ける。 エレベータ・ホールには、運悪く二台の […]
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