第四百三十二夜   社外での用事を終えて乗り込んだ夕方の列車は、このご時世とまだ定時前ということもあってかなり空いていた。 それでも扉付近の席は埋まっており、ソーシャル・ディスタンスを意識して車両の端の空席に腰 […]
第四百三十一夜   会計を終えた商品を買い物袋に詰め終えて、一階出口へ続くエスカレータへ向かうと、トイレの前のベンチに小さな子供を抱いた若い母親が座っているのが見えた。 言葉を話し始めたばかりの頃なのだろう、母 […]
第四百三十夜   深夜、バック・ヤードで雑誌を読んでいると、監視カメラのモニタに駐車場へ入って来る大型トラックの姿が見えてレジへ出る。 間もなく件の運転手と思しき若い男が入店し、いらっしゃいませと声を掛ける私に […]
第四百二十九夜   午後の陽の柔らかく当たるベランダで並べたプランタを弄っていると、尻のポケットに入れたスマート・フォンが短く振動した。 剪定した葉や落ち葉をゴミ袋に入れてその口を縛り、生ゴミ用のバケツに片付け […]
第四百二十八夜   髪にタオルを巻いた妻に促され、風呂に入って体を洗っていると、しばらくして洗面所兼脱衣所からドライヤの音が聞こえ始めた。 美容院の滞在時間を短くしたいとの理由から、元は肩より下まで伸ばすことの […]
第四百二十七夜   このご時世で年末年始に帰省できずにいた郷里の様子が、朝食を作りながらBGMに流していたテレビのニュースに映った。 何やら感染率が急激に高まっただか、市内の病院でクラスタが発生しただかで、見覚 […]
第四百二十六夜   一月も下旬になり、入試まであと僅かとなったある日、仲の良い友人に誘われてこっそり小遣いを持って登校した。買い食いをしようというのではない。学校近くの天神様へ、学業成就の御守を頂きに行こうと言 […]
第四百二十五夜   求人情報を見付けて訪ねた雑居ビルの二階、衝立で仕切られた面接室らしき区画に受付の女性に案内され、 「そちらへお掛けになってお待ち下さい」 と、椅子を勧められる。 直径二メートルほどの白い円卓 […]
第四百二十四夜   モニタに資料を大映しにして眺めながら発言者の言葉に耳を傾けつつ、あと十数分でやってくるだろう昼食休憩のメニュを考えていると、発言者の後ろで何かガサガサと物音のするのが耳に付いた。 オンライン […]
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