第八百八夜    眠い目を擦りながら手拭いを手に部屋を出、共用の細長い洗面台で顔を洗う。折角の小旅行だが、メイン・イベントは不発だったようだ。後はせめてこの宿の朝食と、昼過ぎまでこのあたりの観光地を巡って取り返 […]
第八百七夜    午前二時、クーラーボックスを荷台に乗せた自転車に跨って、荷物を背負い家を出た。明日は仕事が休みで、久し振りに近所の川に出て夜釣りを楽しもうという魂胆だ。  今年の夏はとにかく気温が高く、夜にな […]
第八百六夜    文化祭終了を告げるアナウンスが流れると、来場客が続々と校門へ向かって移動を始めた。その流れに逆らうように生徒達が各々の教室に戻って来る。ここから僅かな時間で後片付けをしなければならない。担任が […]
第八百五夜    始業時間まで二十分ほど、早足で事務所へ入り、既に出勤していた同僚二人に挨拶をしながら席に荷物を置いて、そのまま奥のトイレへ向かった。食中りというほどではないが、朝から少々腹の調子が悪い。  用 […]
第八百四夜    先輩達の怪談一時間ほど続いただろうか。 「じゃあ、私で最後ね」 と語り部の席に着いて宣言した先輩が、 「B棟に入ってる新入生は挙手して下さい」 と微笑むと、私を含めてぱらぱらと手が挙がる。   […]
第八百三夜    駅から徒歩五分の間に吹き出した汗をタオルで拭いながら事務所に入ると、既に冷房を効かせていた同僚がおはようと声を掛けてきた。その声の調子がどうも弱々しい。何かあったかと尋ねると、昨晩女性に振られ […]
第八百二夜    半年振りに出張で東京へ行っていた同僚が、土産のお菓子で膨らんだ紙袋を手に出社してきた。そこから一つを取り出して他の同僚に手渡し皆に配るよう頼むと、残りを休憩室に運び込む。  給湯室でお茶を淹れ […]
第八百一夜    足の極端に遅い台風がようやく去って、一週間ぶりに街まで下りて買い物をした。その帰り、大量の食料や物資を積んで山道を登る足回りは重く、木の葉どころか枝ごと折れて飛ばされてきたものが散乱する中を慎 […]
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