第六十夜 ここ数週間、スマート・フォンの電池の減りが異様に早い。そろそろ寿命かと店へ持っていって調べてもらうと、電池容量は正常で、各種の設定や電波状況次第ではそういうこともあるからと、一通りの助言で済まされた。電波の不安 […]
第五十九夜 ある山奥の神社へ用があり、朝から汽車を乗り継いで最寄りの駅に付いたときには午後一時を回っていた。バスの来るまでの暇を、待合小屋の日陰で居合わせた地元の老人達と世間話をして過ごす。ようやく着いたバスから家族連れ […]
第五十八夜 路線バスを降りると、空梅雨のお天道さまがじりじりと肌を焼く。帰りのバスの時刻を確かめようとバス停の時刻表の前に身をかがめると、川を渡って来る風が肌の熱を幾らか奪ってくれるのに気が付く。 その風に乗って、某園の […]
第五十夜 「お、そろそろだな」。 友人の声に壁掛け時計を見やると、十時半を三秒、四秒と過ぎてゆくところだ。 「本当に?」 と尋ねると、 「後三十秒で分かるさ」 と笑って返す。 最低限の家具だけが無機的に並ぶこの部屋の主曰 […]
第五十六夜 もう夜も半ばというのに相変わらず不快指数の高い空気の絡みつく中を、自転車で友人を先導しながら走る。 私を追いながら、アスファルトとコンクリートが日光を溜め込むのだ、密度の高い住宅やビルがエアコンを点け続けるか […]
第五十五夜 湯上がりの火照った肌を浴衣の生地が撫で、肌と生地との間に風が通るのが心地よく、ついつい大股で歩いて部屋へ戻ると、仲居がちょうど布団を敷き終えたところだった。 失礼しましたといって頭を下げる彼女にいい湯だったと […]
第五十四夜 もう今日は休もうかと考えていた深夜、台風一過で雨が止んだのを見てこれ幸いと着替え、ジョギングに出る。出不精で運動嫌いだったはずの私がひと月もしないうちに、一日走らずにいれば尻がムズムズと落ち着かなくなっている […]
第五十三夜 久方ぶりに雨が止んだので、縁の下から這い出て庭を抜けて散歩に出ようと思ったが、いつもの通りへ出る玄関先に大きな水溜りが出来ている。脚を濡らすのは御免被りたい。庭を家の裏手へ回ると轟々と音がする。背中の毛を逆立 […]
第五十二夜 きれいに短く切りそろえられた白髪頭を掻きながら老爺は淋しげに笑う。 「もう随分と長いこと、蝉の研究をしてきたけれどね、本当に、心の底から悔しいことが一つあるんだ」 「ほう」 と一つ返事をして、夕暮れの公園で友 […]
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