Posts in 第二百八十一夜〜第二百九十夜

小説記事

第二百九十夜

橘 偲 -
10月 10
第二百九十夜   電車を降りると海風が強いのか、磯の香りが鼻を付く。こういう晩は天気予報に関係なく弱い雨の降ることが多い。 外に干した洗濯物を心配しながら牛丼のチェーン店に入り持ち帰りの注文をして、カウンタ席の […]
read more
小説記事

第二百八十九夜

橘 偲 -
10月 6
第二百八十九夜   そろそろ日付が変わる頃合いに、レジスタをアルバイト仲間に任せ、バック・ヤードから明日発売の雑誌を運び出すことにする。 どこのコンビニエンス・ストアでも同じというわけではないかもしれないが、駅 […]
read more
小説記事

第二百八十八夜

橘 偲 -
10月 3
第二百八十八夜   夕食に間に合うよう、陽の傾いた頃に友人と別れて帰路についたが、電車の中の人々も、マンションの共用玄関の自動扉も、やはり私が見えないらしかった。人とぶつからぬよう、自転車や自動車に轢かれぬよう […]
read more
小説記事

第二百八十七夜

橘 偲 -
9月 29
第二百八十七夜   友人の声に顔を上げ、本を閉じてベンチを立つ。雑貨屋や服屋を見て回るつもりで待ち合わせをしていたのだが、予定より十分早く着いてから三十分も待たされた。 寝坊でもしたかと尋ねると、彼女は私の横を […]
read more
小説記事

第二百八十六夜

橘 偲 -
9月 26
第二百八十六夜   打ち合わせを終えて外に出ると、低い雲が垂れ込めて辺りは既に薄暗くなっていた。秋の陽は釣瓶落としとはこのことか。 一雨来る前にと急いで事務所へ戻ると、独り留守番を任せていた事務員の女の子が青ざ […]
read more
小説記事

第二百八十五夜

橘 偲 -
9月 22
第二百八十五夜   ソファ・ベッドの前に置いた低いテーブルに酒とツマミ、大型モニタにネット配信の映画を流す用意をして部屋の電灯を消してから、このささやかな宴の前に用を足しておこうとワンルームの戸を開けて便所に入 […]
read more
小説記事

第二百八十四夜

橘 偲 -
9月 19
第二百八十四夜   やや肌寒く湿った空気は木々と土の香りがして心地よい。時折輝く灯り以外は本当に真っ暗闇の中、太腿を軋ませながらペダルを漕ぐ。 自転車が先かカメラが先か、趣味が昂じて連休には夜通し走って海や山を […]
read more
小説記事

第二百八十三夜

橘 偲 -
9月 15
第二百八十三夜   行きつけのスポーツ・バーのカウンタで、 「へぇ、気のせいだと思うけどねぇ」 と愛想笑いを浮かべて、それが苦笑いにならぬうちにグラスのジン・ライムに口を付ける。隣に座る友人が、リサクル・ショッ […]
read more
小説記事

第二百八十二夜

橘 偲 -
9月 12
第二百八十二夜   夜勤明けの怠い身体をがら空きの下り電車に揺られてつい舟を漕いでいると、いつの間にか最寄り駅で車両の扉が開いていた。 閉じる扉に半ば挟まれながら慌ててホームへ出ると湿った熱気が全身を覆い、直ぐ […]
read more
最近の投稿
アーカイブ