第二百五十夜   夕刻、外での用事を済ませ、帰社するために乗った列車でラップトップ・パソコンのキィを叩いていると、セーラー服の集団が乗り込んで来て、少々喧しくなった。 若い子の元気が良いのは好いことだと年寄り染 […]
第二百四十九夜   カツ カツ カツ 十数歩後ろを硬い足音が背後から付いてくる。最終電車から降り、駅前の小さな繁華街を抜け、公園の脇の道へ入り、辺りが静かになってからずっとだ。 強姦魔か強盗か、それとも単に家の […]
第二百四十八夜   窓外で手を振る二人が見えなくなると、鞄から英単語帳を取り出す。自宅の最寄りまではあと二駅しか無いが、山奥へ向かうに連れて駅の間は広くなる。一駅十分、二十分ほどは明日の小テスト対策が出来る。物 […]
第二百四十七夜   どうぞと促され、管理人の引き開けたガラス戸を潜ると、古い木板と僅かなカビの臭いが鼻に付く。その匂いは不快というより寧ろ、 「懐かしい臭いですね。僕が通ったのは、こんな立派な木造の校舎ではあり […]
第二百四十六夜   怪奇モノのTV番組を見え終えた娘達に風呂を促そうとしたときだった。 「じいちゃんも、死神を見たことがあるぞ」 と、ビールで酔った父が上機嫌に笑う。 私が子供の時分には、こんな風に子供と会話を […]
第二百四十五夜   薬品の臭いのする廊下を、足音を忍ばせながら部屋番号を確かめつつ歩く。特に病院が嫌いというわけではないが、非日常的な清潔さ、静かさ、臭いには、どうしても胸がざわつく。 ――あった。 目的の大部 […]
第二百四十四夜   墓場での宴会が終わり、日の出間近の紫色の空の下、同居人である後輩を連れて鎮守の森を歩く。このルートだと住処までは十分程余計に掛かるが、できるだけ人通りの少ない道を歩きたいのでそこは我慢する。 […]
第二百四十三夜   突然、ブツリと電話が切れた。 大型連休を目前に控えた夜、大学の友人の一人から数年ぶりに掛かってきた電話だった。連休中に暇ならば久しぶりに会って酒でも飲もうと、スマート・フォンを肩と耳とで挟み […]
第二百四十二夜   書類仕事が片付くと、職員室に残っているのは今年ここへ赴任してきたばかりの私と、一回りほど年上の先輩一人だけになっていた。声を掛けると、 「もう暫く掛かるから、お先にどうぞ」 と言うので、さっ […]
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