第二十夜 夕暮れ。不意に強くなった西風に追われるように吹かれて背を曲げ、マフラーに鼻まで埋もれながら大学の構内を歩いていると、空一面低い黒雲の垂れ込めて一粒ぽつりと来たかと思えばばらばらばらと俄に勢いを増してくる。 この […]
第十九夜 コートの襟を立て背を曲げ、北風の中を歩く。冬の陽は明るいばかりで暖かくない。 せめてもの暖を取ろうと、両手をコートのポケットへと入れると、右手に冷たいものが触れた。 歩きながら手探りすると、どうやら薄い円形で硬 […]
第十八夜 地下鉄を降りて早足で改札を抜ける。買い物に来ただけで急いでいるのでもないのだが、早歩きが癖になっているのだ。 階段を登ろうとすると、別方向から来た若い女性の後になった。三段ほど間を空けて続くと、女性の尻が目の高 […]
第十七夜 ふと気がつくと、水が極めて冷たい。眼下の孔から覗く外の景色は夜にしては明るく、月夜なのだろうことが推測される。 私は横倒しの植木鉢の上部に溜まった比較的温かい水域から鈍い体をくねらせて孔を抜け、水面近くへ泳ぎ出 […]
第十六夜 右手にリード、左手に糞尿処理用のあれやこれやを持って、青黒い夜道を散歩している。 体高は膝ほど、組み付いて背伸びをしても精々腰まで。等間隔に並んだ街頭に枯れ草色の毛が照らされる彼のリードを引きながら、彼のこの小 […]
第十五夜 車内アナウンスで次のバス停の名前が告げられ、降車ボタンを押すよう促されて右手を持ち上げると、先に誰かがボタンを押したようで 「次、停まります」 の声が車内に響いた。 程なく停車し、大学生くらいの五人組、仲の良さ […]
第十四夜 駅からの帰路、小さな交差点を左へ曲がり細い道に入る。街灯が少ないのに応じた分だけ、自転車の灯が強まったように思われる。 小路との三叉路を一つ、交差点を一つ過ぎ、右手に駐車場が見えたところで前籠の鞄からキーケース […]
第十三夜 みぞれの降る街を、傘を差して歩いている。十字路の横断歩道を渡り数メートル進むと道は大きく左へ折れており、曲がった先には小さな橋が架かっていた。 橋に近付くと少しづつ左右の視界が広がり、橋の五メートルほど下を水が […]
第十二夜 夕まづめ。ユスリカが羽化をしようと湧いて立つのを食らってやろうと、葦のしがらみの陰から泳ぎ出る。昨夜は上流で雨でも降ったか、水はやや濁って流れも早い。 こんな日は食事に夢中になって流される者が少なくない。すると […]
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