第四百三十九夜   数日ぶりに気持ちよく晴れた日曜の朝、春の長雨のために溜まってしまった洗濯物を午前中にやっつけてしまおうと、ベランダの物干しに洗濯物を吊るしていると、背後からインターフォンの呼び出し音が聞こえ […]
第四百三十八夜   荷物持ちを期待して買い物に連れて行った弟が帰り際、 「本屋に寄っていきたい」 と言いだした。目論見の外れたことを内心で嘆きつつ、生鮮食品の袋を受け取って一人家路を歩くことにする。 弟が大学進 […]
第四百三十七夜   カートに載せた一週間分の食糧を眺めながら、屋上の駐車場へ向かうエレベータの到着を待っていた。最近は運動不足を補うべく、多少のことなら階段を上り、自転車や自動車を避けて歩くことにしているが、流 […]
第四百三十六夜   目元をハンカチーフで押さえながら幾度も深々とお辞儀をし、礼の言葉を繰り返しながら、小さな自転車を積み込んだ大きなワンボックス・カーに乗り込んだ若い夫婦はゆっくりと去って行くのを見守っていると […]
第四百三十五夜   草木も眠る丑三つ刻、書類仕事を一通り片付け、週刊誌を捲りながら鳴らない電話の番をしていた。 小規模のタクシィ会社の事務所で、客からの電話と運転手からの電話とを、深夜帯は一人で担当する。終電か […]
第四百三十四夜   昼のニュースを眺めながら弁当を食べていると事務所の電話が鳴った。慌てて口の中身を湯呑みの茶で流し込んで受話器を取ると、 「この間はどうも」 と工場近くの神社の神主からだ。直ぐに用件の目星が付 […]
第四百三十三夜   仕事で招かれた先であてがわれた宿は、海に切り立つ崖の上に建っていた。このご時世で客も従業員も少なく、宿の主人がしきりに碌な饗しが出来ないと頭を下げたがとんでもない、海の幸と甘い地酒が大いに気 […]
第四百三十二夜   社外での用事を終えて乗り込んだ夕方の列車は、このご時世とまだ定時前ということもあってかなり空いていた。 それでも扉付近の席は埋まっており、ソーシャル・ディスタンスを意識して車両の端の空席に腰 […]
第四百三十一夜   会計を終えた商品を買い物袋に詰め終えて、一階出口へ続くエスカレータへ向かうと、トイレの前のベンチに小さな子供を抱いた若い母親が座っているのが見えた。 言葉を話し始めたばかりの頃なのだろう、母 […]
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